
「ミスター、まずは水を飲みなよ」
僕はこんな言葉を話しかけられていた。イラン人のおじさんから、日本語で。
サーダーバード宮殿博物館の観光を終え、20分あまりをかけてバス・ターミナルまで下りてきた。この日は食事をろくに取っておらず、水も限りあるからとケチっていたんだけど、そのせいでひび割れた唇は、イラン人のおじさんに「終わっている」という印象を与えたらしい。
イラン人に頼み事をされるおじさんはタクシー運転手だった。といっても、かなりくたびれた自家用車を使った無認可タクシーなんだけど。でも、「むかし日本でずっと働かせてもらって日本には感謝している。ほんとはダウンタウンまで20000リアルくらいするんだけど、4000でいいよ」という。なかなか魅力的な提案だった。
もちろん、一般に知らない人の車に乗るのはすごく危険な行為だ。僕だって例えばトルコのイスタンブールだったら絶対乗らない。でも、
・ここはイランである。イラン人の日本語使いはわりと評判がいい
・用心しながら話し込んでみた印象からすると、おじさんは誠実そうだ
・これまで18カ国ほど旅行してきた経験からすると、今回はたぶん大丈夫そうと頭の中で考え、ゴーサインを出したのである。
いざ車に乗り込んだら、さらに不思議な提案を受けることになった。「日本から持ち帰った留守番電話機がうまく使えないんだ。設定したいけど日本語のマニュアルが読めないし。もし時間があったら家まで来てくれないか?」 僕はこれも同意した。
これも冷静に考えるとひどく危険な行為だと思う。でも、最初に大丈夫だろうと判断した印象と、イラン人の民家を覗く機会なんてそうそう得られるはずもないという好奇心が勝り、乗っかることにしたのだ。
それからものの数分でおじさんの家にやってきた。見かけこそ質素だけれど、何しろ宮廷博物館の近くの高台というなかなかの立地。「日本で8年間働いて稼いだお金で建てたんだ」と、おじさんは胸を張って言った。
かくして、僕はイラン人のおうちに上がり込むことになった。
続きを読む
posted by たあぼう at 20:00
| デリー 🌁
|
Comment(5)
|
TrackBack(0)
|
ペルシア(イラン)旅行