
渋谷区恵比寿西1-3-11 (広域)
Tel:03-3461-8538
予算:850円〜(昼)、2100円〜(夜)
味 :★★★★
辛さ:★★☆
量 :★★★
恵比寿の五叉路に構えるキッチンボンは、美空ひばりが愛したというボルシチで有名な洋食屋さんだ。ほかにも黒澤明監督など昭和の大御所と呼ぶべき方々が客人に名を連ねていて、僕などは圧倒されてしまいそうになる。
気圧されずに入ってみれば店内は割と庶民的な雰囲気をしている。長年活躍してきたであろう年輩のシェフたちを意識しなければ、よくあるキッチンと思えなくもない。ランチのカレーライスであれば850円で味わえる。
でも僕はそのランチ用カレーを素通りして「チキンカレー」(2100円)を注文した。こちらはランチ、ディナーともに出るものだ。ちなみにランチカレーの肉はビーフ。ビーフよりもチキンの方がはるかに高いのはなぜ? 聞けば、素材から作り方から違うそうで。
そのチキンカレー、横浜の老舗ホテルであるホテルニューグランド仕込みのレシピをベースにしているとのこと。ニューグランドのカレーは「日本の近代フランス料理の父」と呼ばれる初代総料理長のサリー・ワイル氏が考案したものだから、それはそれは由緒正しいものなわけですよ。
また圧倒されそうな情報が追加されちゃったな(汗) 注文してからカレーが到着するまでにしばらく時間がかかるから、その間に心を落ち着けておこう。ボルシチのうまさを語る雑誌の切り抜き記事などを読み込んでいたら、退屈せずに待てた。さあ、いただきます。
まずは一口大になっているチキンから味わってみようかな。うん、吟味された鶏肉なのだろう。程良い弾力と、素材そのものが持つ滋味と、軽めの香ばしさが舌に伝わってくる。
カレーソースはどうだろうか。こちらも一口めから、ブイヨンで取っていると思われるしっかりとした旨みが広がる。特徴的なのは軽い甘みを感じること。本家ニューグランドホテルのレシピに沿っているのだとすれば、よーく炒めたタマネギやリンゴなどによるものと思われる。
正直に打ち明けると、僕は強い甘さを感じるカレーは嫌みに感じられて、あまり得意ではない。このカレーも苦手なタイプかなと一瞬思った。ところがこのカレーの甘みは不思議と尾を引かず、嫌みになりにくい。これはほかのお店では体験したことがない感覚だった。
付け合わせの福神漬けやショウガなども甘みが強かった。レシピは抜本的には変えていないと思われるので、きっと昭和の大御所たちはこうした甘みを親しんだのだろうな。今時の流行りとは異なる味だと思う。
とはいうものの、一皿の完成度の高さは間違いない。日本のカレーの歴史を知っておくうえでは、はずせない一軒とだろう。
その圧倒されそうな情報を知っていれば、迷わず「チキンカレー」にしたのですけどね。
あちらもチキンが別にソテーしていて、調理法が違う点では同じでしょうが、
あそこの値段の差はここほどではないですけどね。
甘いカレーとのことですが、昔は、甘いものが美味しいと感じられていた、
うまし=甘し(読みも、うまし)という時代でもあったのでしょう。
そうですよね。僕も最初は普通のカレーライスを注文しようかと思いました。でも立派な値段のチキンカレーを見つけてしまい…尋ねてしまった次第です。
気が向いたら再訪してくださいね(^-^)
>さきちゃんさん
仰るとおりですね。一緒に居合わせた常連さんがやはり年輩の方で「世代的な味覚に合っているのかな」と思いながら味わっていました。