行きのSHATABDI EXPRESSとは違う庶民向け列車に乗った。所用時間は倍近くかかり、軽食も出てこない。およそ便利とは言いがたいけれど、これが標準的なインドの鉄道の旅なんだろう。
4時間ほど揺られてデリー市内に戻ってきた。ただし、乗った列車は旅行者が最も利用するであろうニューデリー駅まで行ってくれず、南東部に位置するニザム・ウッディーン駅が終着駅だった。僕はこれを逆用して、ニザム駅から直線距離で1kmほどのフマユーン廟を訪れようと決めていた。フマユーン廟はムガル帝国第2代皇帝の墓。ユネスコが1993年に世界遺産に登録している。
■撮影スポットを提案するばあちゃんに出会う■
サイクル・リクシャーに乗ること数分、フマユーン廟に到着した。入場料5ドルを払い、敷地内に足を踏み入れる。
軽く数百メートル四方はある広大な庭園の中央に、褐色の対称形の建造物がどっしりと構えていた。これが廟か。規模や荘厳さではタージ・マハールにかなわないけれど、雄々しさが全面から伝わってくる。
ドーム内にも入ってみた。中央には大理石のお墓が置かれていた。と、そのそばにインド人のばあちゃんがいた。彼女は手招きし、ドーム内の窓際に行くよう僕を促した。そこまで僕が行くと、「敷地の入口方面の写真を撮影したらどうか?」と、身振り手振りで提案してきたのだった。
言われるままに撮影したら、後でバクシーシ(喜捨)を要求されることは確実だ。でも、僕は妙に気に入ってしまった。「自分がモデルになってやるから撮れ、それからバクシーシくれ」といったよくある傲慢な主張とは違い、「景色を撮れ」というちょっとした工夫を感じたからだ。
そこで僕は、「ばあちゃん、モデルになってくれまいか」と交渉を開始した。代金はポケットに入っていた全額と考えていた。取り出してみると、6ルピーしかない。これは交渉が大変かもしれないな(^_^;)
■身振り手振りでタフな交渉■
ばあちゃんは、意図はたちどころに理解してくれた。でもなかなか首を縦に振ろうとはしない。やっぱり金額がご不満な様子だ。そりゃそうか。
とは言え、僕もどうしても撮影したいわけじゃないし、財布にも10や20といった手頃なルピー紙幣を切らしていた。身振り手振りで、今用意できる全額が6ルピーであることを示す。
数分やり取りが続いた後、ばあちゃんは「トゥエンティ」と主張してきた。僕は首を横に振る。すると、ばあちゃんは交渉を打ち切った。そうかあ、仕方ないなあ。
あきらめてドームの出口へと歩いて行くと、「ウェイ!!」と後ろから声がかかった。お、もらえるものはもらっておこうと考えを改めたらしい。交渉が成立したぞ。
こうして、ばあちゃんはモデルになってくれた。今回の旅で言うと、これが最初で最後の、了解を取って撮影できたインド人女性の写真なのだった。
おばあちゃんもタフですね。
交渉の様子がリアルに感じられて面白かったです。
「こっち方面の撮影をしたらどうか」というのも
面白いですね。
あらゆる意味で濃い国、インド。こりゃ行ってみないと。
ヨメを説得するのが大変ではありますが。
それでは、失礼しました。
書き忘れましたが、渡したお札が「もう少しで破れそう」と、抗議もされました(笑) 生きていくには見た目に現れない逞しさが必要だな〜なんて思ったりしたようなしないような。
突っ込み上手の奥様に、ぜひ各所に現れるインド人を突っ込んでほしいです(^-^)