2007年12月23日

ブログでは読めない痛快エッセイ−−小野員裕さんが書き下ろしの新著

作務衣を着た主人の店にうまいものはない。「前作のカレー放浪記では、小野さん大人でしたよねえ。内容は面白かったです。でも、昔の東京カレー食べ尽くしガイドのような向こう見ずな勢いがほしかったなぁ、なんて」

カレー評論家の小野員裕さんとの座談会が終わった後、そのまま小野さんや編集者さんたちとお酒を酌み交わしました。いい感じに酒が入ったところで、僕は冒頭のような発言をしてしまいました。酔った勢いとはいえ、聞きようによってはかなり失礼な物言いですよね(汗)

幸いなことに、寛大な小野さんは全く怒らないでいてくれました。そればかりか、「僕のわがままに応えてくれたのか」と思いたくなるエッセイをこのたび書き下ろされました。「作務衣を着た主人の店にうまいものはない。」(双葉社)です。タイトルからしてなかなか刺激的ですよね。

■沸点が低い方にはおすすめしません(^_^;)■

内容は、平たくいうと「おいしいお店の見つけ方ガイド」。いや、違うかな。「まずいお店の避け方ガイド」と呼んだ方がしっくりくるかもしれません。読者が思わず笑ってしまうようなダメダメなお店を、小野さんが実体験を基にいくつも紹介しているのです。

例えば、タイトルにもなっている「作務衣を着た主人の店」だったり、「相田みつおなどの人生訓が飾ってある店」だったり、「バカっていねいな店」だったり。特に今作は小野さんの筆が奮っていて、その斬りっぷりは痛快という言葉がぴったり。該当してしまったお店のご主人は、怒りに震えるかもしれませんが(笑)

小野さんの視線はお店だけでなく、私たち顧客の側にも向かっています。ブログでお店情報をつづっている身には、考えさせられることが多くありました。実は拙ブログのことはかなり好意的に紹介してくださっていますが、これは顔見知りだからだと割り引いて考えておきます。

中には、「これをブログで書いたら非難するコメントが集まって“炎上”しかねないな」と思う内容もありました。「女がたむろする店よりオヤジが集う店」に行け、とか(^_^;) でも、だからこそ書籍でしか味わえない面白さが詰まっているとも言えるでしょう。

そんな調子ですから、お店を営む立場であれ、顧客の立場であれ、沸点が低い方にはおすすめしません。逆に、批判をしっかり受け止めつつも、笑っていなせるような大人のあなたには、ぜひ手にとってほしい本でした。

−−−−−
なお、今回は双葉社さんから献本いただきました。小野さんのご指定と思いますが、初めての経験でした。今後とも何かありましたらよろしくお願いします。
posted by たあぼう at 03:02 | Comment(6) | TrackBack(0) | 余談・雑談ほか
この記事へのコメント
素晴らしいタイトルですねー。
作務衣を愛用してる人が微苦笑でさらっと読めなければ、ちょいと大人気ないきゃもしれまちぇん。←なんでピノ子語なの?あたち。^^;

しかしネットと書籍じゃ受け手の反応おんなじでも、反応の表現速度が異種なんでしょな。
ネットはコメント規制かけてなければ「すぐ」自分の感情表現出来ちゃう(反映されちゃう)からねえ。。。情報伝達速度が速いぶん、ややもすりゃあイージーさが突出すんのきゃもしれまちぇん。
封書で直筆で読書感想文をしたため、切手を貼り付け郵便ポストまで出向く。←この手間が面倒臭いと感じられるほどに便利?な伝達速度について、ちょいと一考させてもらいまちた〜。
Posted by 海苔助 at 2007年12月23日 19:22
いいですね!痺れるタイトルですね。
私が言うのとは全く重みが違いますので、読んでみたいですね。

「有名店に美味い店なし!」
向こう見ずな私は・・こう言うましたが・・・。
Posted by サントーシー at 2007年12月23日 21:52
海苔助さん

ありがとうございます。書籍の場合、内容に不満を覚えても、手紙を出すなり電話するなりして批判するまでのステップが、ネットよりも大きい。「考えてみると他愛もない内容だよな」などと、少し冷静になれる期間があるんですよね。

その点、ネットは気軽に書き込めてしまう分、脊髄反射かと思うようなコメントが見受けられます。たとえ相手の記した内容が稚拙だったとしても、何人かでよってたかって荒らすような結果にはしないでほしいものです。それだけ面白い書き手を失いかねないわけですから。

また、ネットは基本的に読者の対象を絞りにくいのが難しいところですね。「この人たちならこの感覚が通じる」というお約束が生まれにくい。意図しない方向に解釈されるおそれが大きい。このあたりに、ある種の限界があるように思っています。

>サントーシーさん

ははは、サントーシーさんのご意見に近いものとして、「有名プロデューサーの店はうまくない」という内容もありますよ。
Posted by たあぼう at 2007年12月24日 00:37
カレーでは「プティフ」などが槍玉に挙げられてしまった”あの本”のようなアプローチが売れ筋なんでしょうね。
粉飾や偽装が暴かれるご時世のため当然でしょうか(笑)。
小野さんの攻撃が顧客にも向かっているという点に興味が沸騰し(沸点低いですか(笑))、都心の本屋で聞きましたが、見入荷でした(笑)。

Posted by 辛党のおっさん at 2007年12月25日 00:46
いや〜、痛快なタイトルですね。

まあ色んなお店に行くと、
大体なんとなくダメなとこは
統一性がある感じですね。

作務衣を着たってのがまたするどい観察眼ですね。

Posted by samurai at 2007年12月25日 00:55
>辛党のおっさんさん

顧客の側への意見は、まあそうだよな、というものなんです。でも、ブログをやっていたり、あるいは口コミサイトを積極活用している人の中には、反発する人もいるだろうなぁと思いました。

書店になかったのは残念でしたね。初刷は少なめなのかもしれません。

>samuraiさん

samuraiさんもいろんな経験をお持ちですか? そういえば時々斬ってますもんね(^_^;)
Posted by たあぼう at 2007年12月25日 21:27
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